2021年4月13日火曜日

「こども庁」創設、選挙目当てでは?仕掛け人に聞くと… 朝日新聞社 - 朝日新聞デジタル - 2021年4月7日

 《子どもをめぐる政策を担当する「こども庁」の創設について、菅義偉首相が検討を指示》。新年度早々、そんなニュースが話題を呼んだ。まだ組織や人員の規模など具体的な内容は固まっていないが、行政の縦割りをなくし、子どもに関する政策に一元的に取り組む狙いがあるという。医療的ケアが必要な子どもを育て、厚生労働省などの取材を続けてきた私は、「かけ声倒れに終わるのでは」という懸念を抱いた。ツイッターでは、「選挙目当てでは?」「それより予算を増やしてほしい」といった声も目立ち、「老人庁」を望む声も。何を目指しているのか。議論を主導してきた山田太郎参院議員(自民)に疑問をぶつけてみた。  ――なぜいま、「こども庁」が議論になっているのですか。  「私自身、ひとり親の家庭に育ち、児童虐待や子どもの貧困といった問題に関心を抱いてきました。そのなかで、子どもに対する性虐待は行政の縦割りで、すべてを把握している部署すらなかったことを知って、子どもの問題に一元的に取り組む『こども庁』創設を自身の公約に掲げてきました」  「1月に菅首相に会った際に『若者にどうアプローチをしたらいいか』と聞かれました。首相は携帯電話料金の引き下げなど若者向けの政策に関心が高いけれど、なかなか伝わらないと感じていた。そこで『伝え方も大事だけど、中身も大事ですよ』と。若者・子ども政策の司令塔がない。まさに縦割り。デジタル庁をつくるようにこども庁をつくった方がいいと私案を渡しました。2日後ぐらいに加藤勝信官房長官から『もう少し詳しく聞きたい』と電話がかかってきました」  「官邸も興味があるようだし、こども庁の話をする機運が高まっているかもしれないと、自見英子参院議員と一緒に若手議員による勉強会を立ち上げ、3月19日にこども庁創設に向けた緊急提言をまとめました」  《緊急提言では、専任の大臣が率いる「こども庁」を創設するほか、「子どもの“命”を守る体制強化」「妊娠前・妊娠期からの継続支援の充実」「教育と保育に関わる子どもが安心して育ち、育てられる社会環境の整備」などを掲げている》  ――こども庁を立ち上げて、どのようなメリットがあるのでしょうか。  「提言書に書いたのは、子どもの命を守れるようになるということ。現状では、子どもが亡くなったときに原因を調べる『チャイルド・デス・レビュー(CDR)』の制度もまだ全国的には始まっていません。子どもの自殺も原因や状況を把握することで、対策を打つことができるようになります」  「教育でも、小さいときから塾に通うなど、いかにお金をかけるかでその後の人生が決まってしまうという声もあります。そうした教育の格差をつくらないようにする政策の司令塔にもなります」  ――新しい組織ができても、予算や権限が伴わないと実効性がないのでは。  「提言書には、こども庁に所管大臣を置いて、子育て関連支出を欧州並みに倍増すると盛り込みました。勉強会の議論では、未就学児についての政策は厚労省や文科省から引っぺがして『こども省』にする大きな再編をした方がいいという意見もありました。ただ、大きな組織をつくっても、そこでまた縦割りになるだけ。中身を詰める前にまずつくるということを決めちゃうわけです」  ――選挙目当てではないかという見方もあります。  「それでいいと思います。選挙目当てといわれても、(有権者に)評価されたらいい。もし衆院選の公約に掲げて何もしなかったら、自民党は来年の参院選でぼろ負けしますよ」  《子どもに関する政策に一元的に取り組む省庁に関しては、かつての民主党も「子ども家庭省」創設を政権公約に掲げ、法案までつくった。山田氏らの勉強会が掲げる「チルドレン・ファースト」は、民主党が掲げた子ども・子育て政策のキャッチコピーでもあった》  「永田町では『民主党の方が子ども家庭省を議論してきた』『パクった』などと言われます。でも、自民党か民主党かは子どもにとってはどうでもよくて、大事なのはできるかできないか。我々は勉強会の内容もすべてオープンにしています。選挙という政策コンテストで、他の政党がもっといい内容を打ち出せばいいんです」  ――自民党には厚労族や文教族といった族議員もいます。族議員や省庁の抵抗はありませんか。  「あると思います。そのため、若手議員中心で、党からも独立した勉強会で議論してきました。縦割りの問題は、縦割りの行政機構の中では議論ができないんです」  「実は、こども庁の議論はこれまで何度も失敗しています。下村博文政調会長は『第1次安倍政権時代に文部科学相として取り組んだが、できなかった』と言っていました。河村建夫元官房長官も『小泉政権時代にも構想はあったけれど、できなかった』と。党内で慎重に議論を始めたらつぶれます。これを打破するためには世論を味方につけるしかない」  ――菅政権が実現までこぎ着けることができるでしょうか。  「やらないと菅政権が生き残れないんじゃないですか。だって、こうした縦割りの解消が(首相の)真骨頂でしょ。もう検討を指示しちゃったから、今からやめるって言えますか?」  ◇  民主党政権時代に「子ども家庭省」設置に取り組んだ小宮山洋子・元厚生労働相に電話で話を聞いてみた。さぞかし「お株を奪われた」と怒っているかと思いきや、「結果的にいいものができればいいじゃない」と言われた。「超党派で取り組んでほしい」とも。  「縦割り行政の打破」は、言うはやすし行うは難しだ。これまで何度も「こども庁」構想が浮上しながら実現していないのは、それだけ省庁の抵抗が根強いことを示している。過去の教訓を踏まえて細やかな制度設計をしないと、今回も同じことを繰り返すだけだろう。(山下剛)

2021年4月12日月曜日

■新航路「21世紀のスエズ運河に」  北極海は、温暖化の影響で北海道の面積に匹敵する約9万平方キロの氷が毎年消失しており、今世紀に入ってから、海氷が解ける夏は、ロシア沿岸を通って欧州と東アジアを船で行き来できるようになった。  航路はインド洋を通る南回りより4割ほど短く、海賊が出没する危険も少ない。国土交通省によると、天然ガスを運ぶタンカーや貨物船の航行は増える一方という。米国は「北極海航路は21世紀のスエズ運河になる」として、調査のための新たな砕氷船の調達を発表した。
中国ワクチンの現実 中国製ワクチンについては、データが外国にほとんど公表されていないため、有効性について長期間、不明確なまま。 同国のワクチン「シノヴァク」は、ブラジルでの臨床試験の結果、有効性は50.4%とされている。これは、世界保健機関(WHO)がワクチン承認の条件としている50%をわずかに上回るものだ。 トルコとインドネシアで実施された後期臨床試験の中間結果では、シノヴァクの効果は65~91%とされている。 一方、独ビオンテックと米ファイザーが共同開発したものや、米モデルナ製、英アストラゼネカ製など欧米のワクチンはすべて、90%前後かそれ以上の効果が示されている。 他国のワクチンとの違い 中国で作られるワクチンは、特にファイザーやモデルナが開発したワクチンなど、一部のワクチンと大きく異なる。 中国製のものは「不活化ワクチン」と呼ばれる。病原性(毒性)を完全に消滅させた、重症化リスクのないウイルスを免疫システムに植え付けるもので、より伝統的な方法を採用している。 これに対し、ファイザーやモデルナのワクチンは「mRNAワクチン」と呼ばれる。新型ウイルスの遺伝子コードの一部を人体に接種し、免疫システムの対応力を鍛える方法を取っている。 アストラゼネカ製のものは、これとは異なる。チンパンジーから採取した風邪のウイルスに、新型ウイルスでみられる遺伝物質を混入させている。このワクチンを接種することで、実際の新型ウイルスとの闘い方を、免疫システムに学ばせるという仕組み。 中国製ワクチンの大きな強みの1つが、摂氏2~8度の一般的な冷蔵庫で保管できる点だ。モデルナ製はマイナス20度、ファイザー製はマイナス70度での保管が必要だ。 中国は自国製ワクチンを世界各地に提供している。インドネシア、トルコ、パラグアイ、ブラジルなど諸外国には、すでに何百万回分ものワクチンを出荷している。