2021年7月26日月曜日

前の投稿の続きです

  例えば、朝日新聞は麻生発言と中国の抗議について、どちらも横組みのベタ扱いで小さく載せただけだった。戦争反対を叫ぶ立場なら「大問題だ」と騒ぎ立ててもいいはずなのに、拍子抜けだ。

 一体、どうしたのか。

 

 私は、麻生発言を大々的に報じれば、それが真実であり「日本の重大問題」と読者に分かってしまう。さりとて何も報じなければ、今後の展開についていけなくなる。そこで、中途半端な判断をしたのではないか、とみる。

 朝日新聞は4月の日米首脳会談で、「台湾海峡の平和と安定の重要性」が共同声明に明記された後、6月に「台湾海峡『危機』のシナリオ」という連載記事(計7回)を掲載した。その2回目で、「南西諸島が1つの戦域になるのは、軍事的には常識で、日本の安全保障に直結する」という河野克俊前統合幕僚長の発言を紹介している。

 

 つまり、彼らも分かっているのだ。分かってはいるが、日本が「台湾有事」に参戦するような現実は見たくない。そんな「左派特有の心情」が記事の小さな扱いににじみ出ている。私には、そう見えた。

 マスコミの反応はともかく、菅義偉政権は「台湾有事」にどう対応するのか。

*そういう心が、戦争に巻き込まれる原因を作る、前の戦争の反省はないのでしょうか❓

 *😍

 菅首相自身は4月4日、日米首脳会談に先立って、テレビ番組で「台湾危機が存立危機事態に該当するかどうか」を問われ、「私の立場で、仮定の話に答えるのは控えたい」と語っている。今回の麻生発言は、菅首相に代わって、政権のナンバー2が「該当する」と表明したかたちだ。これは「一歩前進」と評価したい。

 日本は中国より先に、「侵攻すれば、日本は自国の安全保障問題として、米国とともに対応する」と非公式なかたちで宣言した。中国が反発したので、緊張が激化したように見えるかもしれないが、双方が態度を明確にして、相手が誤解する可能性を少なくした。

外交的には、有意義な応酬だ。

 中国が台湾侵攻を決意しているとしても、実際に侵攻するまでには、こうした外交的駆け引きは何度も続くだろう。それで衝突を回避できる可能性もある。危険なのは、相手を刺激したくないがために、過剰に自粛する事態だ。甘い態度はかえって、相手の強気を誘発しかねない。

 

 菅政権は台湾に限らず、沖縄県・尖閣諸島についても、断固として防衛する意思を繰り返し明確にすべきである。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。

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