2020年4月21日火曜日

10. 日本で漢方薬をCOVID-19に使うための課題と解決策 COVID-19に対する漢方薬の海外の事例,日本での可能性について述べた。実際に日本で感染予防や重症化予防を行うためには,いくつかの課題を乗り越える必要がある。 (1)煎じ処方を活用するための煎じパックの活用 中国,韓国,台湾の処方を見ても煎じ薬が主である。煎じ薬は医師であれば保険内で処方できるが,日常診療で煎じ薬を処方する医師は少ない。また,自宅で煎じることもままならず,緊急を要する場合も多い。各国のガイドラインにあるように,ある程度処方を絞ってすべての自治体で活用してもらうことが望ましい。 特に清肺排毒湯は既に中国・台湾・韓国において治療ガイドラインに組み込まれており,臨床経験も積み重なってきている。煎じ薬ではあるが,今は煎じ機器で真空パックにすることも可能である。それができる漢方診療施設で備蓄ができれば,すぐに患者さんに届けられる。 (2)漢方専門外来における感染対策としての初診オンライン診療の導入 台湾のガイドラインにも明記されているが,予防および治療は個々の状態を見て決定する必要があり,漢方に詳しい医師の判断を要する。しかしながら感染を疑われる患者が来院しても対応できる漢方専門施設は少ない。特にマスクや消毒用アルコールの入手がきわめて困難な状況で,十分な感染対策を準備できる診療施設は少ない。初診オンライン診療には多くの医師が期待していると思うが,漢方の専門知識を活用するために,初診オンライン診療を許可いただきたい。 さらに漢方に詳しい相談薬局を活用することも提言したい。たとえば日本漢方協会では,COVID-19に立ち向かうという会長の強い意思が示されている。漢方に詳しい医師が限られていることから,薬剤師の活用も考慮すべきである。ただし,この場合にもその薬局を感染から守る措置が必要である。 (編集部注:本稿執筆後の4月10日から,厚生労働省は初診のオンライン診療を感染が収束するまでの期間限定で容認した) (3)予防に対する保険漢方薬処方の規制緩和 感染予防の漢方治療について述べたが,現実には日本の医療制度では「予防」投与は認められていない。しかしながら,もし家族が発症し,自宅にいたら,どう対処すればよいのであろうか?ハイリスクの家族や,医療の最前線にいる医師たちが予防として服薬できるように是非とも「未病」の考え方を導入していただきたい。 (4)食薬区分の「専ら医薬品」に該当しない生薬の活用 わが国には食薬区分という制度があり,黄耆,金銀花,連翹などは医師・薬剤師を通さないと入手できない。一方で板藍根,冬虫夏草,薬用人参,霊芝などは「非医」という位置づけである。これら生薬の免疫賦活作用は国内外に基礎研究・臨床研究とも多数ある。予防として漢方薬が認められていない現状でも,明日から活用できる。 多量に服薬しない限り安全性も高い。ただし,通販などで入手するものは品質のばらつきが多く,粗悪品もあるので,注意が必要である。漢方に詳しい薬局での購入をお勧めする。 (5)中国・韓国・台湾における伝統医療の知見の共有と生薬の確保 中国・韓国・台湾では多くの伝統医療医師が第一線でCOVID-19に携わっている。そうした知見を積極的に情報共有してもらうパスをつくることが必要である。また,清肺排毒湯を日本に導入するためには,生薬使用量が多いことから,需要が高まれば枯渇する可能性がある。そうした場合に備えて,政府間で,十分な生薬の確保をお願いしたい。

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