2020年4月21日火曜日

4. 中国新型冠状病毒肺炎診療方案第七案の中医治療ガイドライン 中医治療部分を抜粋したガイドライン(表1)を示す。小川によって詳述されているので,そちらも参考にしていただきたい7)。 COVID-19に対する中医薬として今回作られたのは「清肺排毒湯」である。軽症から重症まで幅広く用いるように書かれている。処方内容は,麻黄9g,炙甘草6g,杏仁9g,生石膏15~30g,桂枝9g,沢瀉9g,猪苓9g,白朮9g,茯苓15g,柴胡16g,黄芩6g,姜半夏9g,生姜9g,紫苑9g,冬花9g,射干9g,細辛6g,山薬12g,枳実6g,陳皮6g,藿香9gであり,石膏を15gにしても196gある。日本漢方では中国に比し,使う生薬量が少ないことは貝原益軒の『養生訓』にも記載がある。構成生薬4種類の麻黄湯は15.5g,構成生薬10種類の十全大補湯は33gであることを考えると,清肺排毒湯をわが国に導入する場合には1/2ないし1/3量でもよいのかもしれない。 清肺排毒湯は傷寒論処方である,麻杏甘石湯,五苓散,小柴胡湯,射干麻黄湯,茯苓飲に藿香が配合されたような内容で,時期を問わずに幅広く用いる処方として開発された。 その上で,感染が確定していない時期には胃腸の不調がある場合と発熱を伴う倦怠感を覚える場合の2つに分けて経過を観察し,診断が確定した後は,清肺排毒湯を用いる。さらに軽症,中等症,重症,重篤,回復期に分けて証を鑑みて処方内容が決められるが,重症以上になると,中医注射剤が使われる。これに関してはわが国では使うことができない。 5. 韓国の伝統医療ガイドライン 韓国は旧正(旧正月)明け頃から急速に患者数が増えた。韓医学界もそれに呼応して,大韓韓医師協会が,韓医学診療勧告案を作成し,3月14日には第2版を公表している。12ある全国韓医科大学の呼吸器内科の協議会,予防韓医学会,韓方小児科学会諮問など,関連韓医学会の知恵を結集し,中国国家衛生委員会のコロナ対策ガイドラインを加味したものである。 作成原則として以下の記載がある。「活用目的として,すべての韓方医療機関で不特定多数の患者を対象に,COVID-19の管理と薬物中心の治療ができるようにした。また,確定患者が急速に増えている現在の状況では,複雑な診断や追加教育を最小化し,すぐに対処ができるようにした。韓方処方として,初期,中期では,症状に応じて3〜4個のタイプの鑑別が可能なようにし,比較的治療が難しい最重度の場合には,シンプルな治療方法を提示した。鑑別が難しい場合には,様々な症状が同時に見られる場合に使用できる治療法を提示した。処方構成は,中国の衛生委員会診療案を主に参考にし,報告された発現症状を分析してできた温病処方以外に,既存の医書の処方と中国診療案で提示した処方などを含んで総合的に構成し,全体の処方数は15個前後とした」 具体的な処方内容は表2に示す。中国政府が開発した清肺排毒湯は軽症・中等症・重症患者に適用できるとしている。その上で軽症初期を表熱証と湿証に分け,軽症中期を裏熱証と湿重症に分け,さらに中等症期,重症期,最重症期に分けてそれぞれの処方を列記している。伝統医学の表現で「湿証」など馴染みがない読者もおられると思うが,「軟便または下痢,気力低下,心下部の痞え,呼吸が弱い場合」と具体的な記載があり,症状から鑑別が可能になっている。

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