2020年4月14日火曜日

中国の指導部が中医学を支持する一因には、漢方は中国ならではの文化であり、誇りだとの思いがある。中医学の歴史は古く、2000年以上の歴史を持つ論文を活用している。習近平(シー・ジンピン)国家主席はこうした誇りを高め、中国共産党を中国の古代からの知恵を代表する存在として再定義することに注力している。同氏は3月、中国は新型コロナとの戦いで「西洋医学と共に中医学も大いに利用していかなければならない」と発言した。 中国政府高官らは、中医学で新型コロナを治せるとは言っていない。だが、中医学を使えば、軽症もしくはそれほど深刻でない患者の重症化を防げるため、致死率が下がり、回復も早まると主張している。中国の政府系英字紙「チャイナ・デーリー」が開設したサイト「中国式で新型コロナと戦う」では、中医学には「病気を引き起こす老廃物を排出する」効果があるため、ウイルスの「生存する余地がなくなる」と説明している 2009年の新型インフルエンザ流行時には麻黄湯が奏効した。麻黄湯は麻黄・桂皮・甘草・杏仁から成り,2世紀に書かれたとされる『傷寒論』の処方である COVID-19に対する中医薬として今回作られたのは「清肺排毒湯」である。軽症から重症まで幅広く用いるように書かれている。処方内容は,麻黄9g,炙甘草6g,杏仁9g,生石膏15~30g,桂枝9g,沢瀉9g,猪苓9g,白朮9g,茯苓15g,柴胡16g,黄芩6g,姜半夏9g,生姜9g,紫苑9g,冬花9g,射干9g,細辛6g,山薬12g,枳実6g,陳皮6g,藿香9gであり,石膏を15gにしても196gある。日本漢方では中国に比し,使う生薬量が少ないことは貝原益軒の『養生訓』にも記載がある。構成生薬4種類の麻黄湯は15.5g,構成生薬10種類の十全大補湯は33gであることを考えると,清肺排毒湯をわが国に導入する場合には1/2ないし1/3量でもよいのかもしれない。 2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行時には中国政府主導の中医薬介入はなかった。フランクフルト大学からは甘草の成分であるグリチルリチンがSARS複製を抑制するという論文が出た3)。一方,2009年の新型インフルエンザの際の中国政府の動きは速かった。政府主導で連花清瘟カプセルをつくり,治療に当たった。構成生薬は連翹・金銀花・炙麻黄・炒苦杏仁・石膏・板藍根・錦馬貫衆・魚腥草・広藿香・大黄・紅景天・薄荷脳・甘草で,麻杏石甘湯と銀翹散を組み合わせた内容になっている

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