2020年4月8日水曜日

宣言のタイミングを慎重に見極め  政権の柱として首相を支える麻生太郎副総理兼財務相や菅義偉官房長官も、「(緊急事態宣言に)一貫して慎重姿勢を維持していた」(官邸筋)とされる。だからこそ安倍首相も「躊躇なく」と繰り返しながら、「マイナスを上回るプラス効果が期待できる宣言発令のタイミングを、慎重に見極めてきた」(同)のが実情だ。  東京五輪の延期を決めたときから、「突然、首相を差し置いてコロナ対策に走り出した」(都議会幹部)とされる小池都知事の言動に、「首相らは苛立ちを隠さなかった」(官邸筋)のも事実だ。  その一方で、小池氏を先頭にした首相包囲網が、緊急事態宣言を決断するきっかけになったとも言える。宣言発令を表明した後の6日夕、安倍首相が「諸外国のような都市封鎖(ロックダウン)はできないし、する必要もないと専門家も言っている」と力説してみせたのも、小池氏への牽制とみられている。  これは、小池氏が東京での感染者急増を受けて「オーバーシュートによるロックダウンの可能性」などとカタカナ英語連発でアピールしたことへの「強烈な皮肉」(首相側近)でもある。その裏側には「首相をしのぐ小池氏の発信力を巧妙に利用し、国民の同調圧力も高めることで、『竹みつ』を『真剣』に変える効果を狙うしたたかな戦略」(有力閣僚)も垣間見える。  唐突に決めた全国休校要請や大炎上した布マスク全世帯配布などへの「反省と自戒の念」(側近)も、「今回の熟慮に見せかけた独断専行批判の回避」(同)につながったとの指摘もある。 与党内でくすぶる経済対策への不満  その一方で、安倍首相の主導で策定した超大型経済対策には与党内からも批判や不満がくすぶっている。自民、公明両党は6日に政府の緊急経済対策案を了承したが、1世帯当たり30万円の現金給付に厳しい条件が設定されたことなどに、「国民の期待を裏切る」「厳しい現実を認識していない」などの批判が噴出した。補正予算の成立後にさらなる経済対策を求める声も出始めている。  そうした中、感染拡大阻止に向けて8日から緊急事態宣言による新たな「国民一丸となった戦い」(安倍首相)が始まった。7日夕に確認された東京の新しい感染者数は80人で前日と同水準だったが、オーバーシュートの危機はなお続いている。  首相サイドは「魔法の杖ではない宣言でも、国民の行動変容には確実に結びつくはず」と国民の協力による連休明けまでの感染減速に期待を込める。  「政治は結果責任」と繰り返してきた安倍首相にとって「これからが政権の瀬戸際の1カ月」(首相経験者)となるのは間違いなさそうだ。

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